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M&Aの価格相場を知る!企業価値の算定方法まとめ

M&Aの価格相場とは?

M&Aの価格相場の基本概要

M&Aの価格相場とは、企業を買収する際に支払われる金額の基準や目安となる数値を指します。この価格は、単に企業の資産価値だけでなく、将来の利益予測や市場価値、無形資産の評価など、多岐にわたる要素を考慮して算定されます。そのため、M&Aの価格は売り手と買い手との交渉結果に大きく依存する側面があります。適切な価格算定のためには企業価値評価が非常に重要となります。

価格相場を左右する要因

M&Aの価格相場は、いくつかの要因によって大きく影響されます。主な要因としては、次の4つが挙げられます。

1つ目は「純資産」です。これは企業の資産から負債を差し引いたもので、M&Aでは時価純資産額として算定されることが一般的です。2つ目は「将来的に期待される利益」です。特に過去3年間の営業利益平均や中期事業計画に基づく将来の収益見込みが価格に反映されます。

3つ目は「市場価値」で、同業他社や同地域における類似企業の市場環境や取引事例を参考にします。最後に「無形資産」も価格相場を左右します。ブランド価値や顧客基盤などの無形資産は目に見えませんが、M&Aでは重要な評価対象です。

業界ごとの価格相場の目安

M&Aの価格相場は、業界ごとに異なる基準が存在します。例えば、建設業や卸売業などの比較的安定した事業では、純資産に営業利益の数年分を加えた形で算定されることが多いです。一方で、情報通信業やサービス業など成長性が期待される業界では、将来のキャッシュフローを含めた評価を行うDCF法がよく用いられます。業界特有の収益性や市場トレンドが価格相場に反映されるため、注意が必要です。

中小企業の譲渡価格では、「時価純資産額+営業利益の2〜5年分」が一つの目安とされています。例えば、純資産が15億円、年間営業利益が3億円の企業であれば、譲渡価格は21〜30億円になり得ます。このように、業界ごとの特性や個々の企業の状況に応じて算定されるのがM&Aの価格相場です。

企業価値算定の主要な手法

コストアプローチとは

コストアプローチとは、企業価値を主に「資産」に着目して算定する手法です。この方法では、対象企業の資産と負債を時価ベースで評価し、その差額である「時価純資産額」を基に企業価値を求めます。さらに、企業のブランド価値やノウハウといった営業権(のれん)を加えることで、包括的な価値が導き出されます。この手法は、特に製造業や建設業など、保有資産が重要となる業種で有効とされています。M&Aの価格算定において、企業の現時点での資産状況を正確に把握するため、コストアプローチが重宝される場面が多いです。

インカムアプローチの概要と特徴

インカムアプローチは、企業が将来生み出す利益やキャッシュフローに基づいて価値を算定する手法です。この方法では、M&A後に期待される利益を予測し、それを現在価値に割り引いて企業価値を算出します。代表的な算定方法として「DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)」が使われます。この手法の最大の特徴は、将来の成長可能性や収益力を重視する点です。情報通信業やサービス業のように将来性が重視される業種では、インカムアプローチが特に適しています。また、買収価格の算定において、将来利益やキャッシュフローがどの程度の価値を持つかを具体的に示せるため、売り手と買い手双方の交渉を進めやすくする利点もあります。

マーケットアプローチの活用方法

マーケットアプローチは、同業種内での類似企業や公開企業の市場評価を基に、対象企業の価値を算定する手法です。この方法では、EV/EBITDA倍率やPER(株価収益率)といった評価指標が用いられます。そのため、例えば卸売業や運輸業など、比較企業が豊富で市場データが入手しやすい業種で特に有効です。マーケットアプローチの特徴は、対象企業の価格を他社との相対比較により評価するため、市場参照性が高い点にあります。M&Aの価格算定の際には、類似取引の事例や業界内の平均的な評価を参考にすることで、取引価格の妥当性を判断する役割を果たします。

DCF法(割引キャッシュフロー法)の実際

DCF法(割引キャッシュフロー法)は、インカムアプローチを代表する算定手法であり、より詳細で正確な企業価値評価を可能にします。この手法では、対象企業が将来生み出すと期待されるフリーキャッシュフローを予測し、それを一定の割引率で現在価値に換算することで算出します。割引率には主にWACC(加重平均資本コスト)を使用します。DCF法では特に、M&A後の利益成長やリスクを織り込むことで、理論的な買収価格の上限値が明確になります。不動産業やサービス業で見込まれる収益性を評価する際、この手法が用いられることが多いです。ただし、将来のキャッシュフローの予測が前提となるため、作成される収益計画の精度や市場トレンドをしっかりと考慮する必要があります。

企業価値算定時の注意点

簿価と時価の違いに注意

企業価値算定において、「簿価」と「時価」の違いをしっかりと理解することが重要です。簿価は企業の過去の会計記録に基づく価値であり、資産や負債の取得時点の価格を基に算出されます。一方、時価は資産や負債を現在の市場価値に置き換える方式で、より実態に即した評価が可能です。

M&Aでは特に時価が重視されるため、不動産や設備の価値が適正に評価されているか確認する必要があります。また、時価純資産額はM&A価格算定の基準として採用されることが多いため、買い手・売り手ともに客観的な観点で算定結果を精査することが求められます。

非財務的資産(ブランド価値や顧客基盤)の重要性

M&Aの価格算定においては、財務上の数値だけでは測れない「非財務的資産」の存在も見過ごせません。たとえば、ブランド価値や顧客基盤は、企業の将来の利益創出に大きく関連する重要な要素です。

企業が持つ信頼性の高いブランドや、継続的な収益の源泉となるロイヤル顧客などがあれば、それらは無形資産として評価に含める必要があります。これらの項目を的確に反映することで、M&Aの価格交渉をより有利に進めることが可能となります。

業界や市場トレンドの影響

企業価値算定には、業界や市場のトレンドが大きく影響するため、それを考慮しながら評価を行う必要があります。成長市場に属する企業は、将来の収益期待が高いため高い評価を受けやすい一方で、成熟市場や縮小市場に属する企業は評価が低くなるケースがあります。

また、業界特有の規制や競争構造も価格算定に影響を与える要因です。そのため、業界全体の動向や競合他社のM&A事例などを調査し、価格設定に適切に反映させることが重要です。

算定結果と交渉のポイント

M&Aにおいては、企業価値算定結果がそのまま売買価格になるわけではありません。算定結果は「参考値」として交渉の基準になりますが、それに購入希望者の戦略や売却理由なども加味されて最終価格が決定されます。

重要なのは「論理的な根拠に基づいた交渉」を行うことです。明確で合理的な算定プロセスを基に交渉を進めることで、売り手と買い手の双方が納得できる価格に到達しやすくなります。また、必要に応じて弁護士やM&Aアドバイザーといった専門家の助言を受けることで、交渉を有利に進めることが可能です。

M&Aの価格交渉成功の秘訣

売り手・買い手双方の視点を理解する

M&Aの価格交渉を成功させるためには、売り手と買い手双方の視点を深く理解することが重要です。売り手側は、自社の価値を最大限に評価してもらい、適正な価格で譲渡したいと考える一方で、買い手側は適正価格で買収することで早期の投資回収や事業拡大を目指します。価格算定における純資産、M&A後の利益見込み、無形資産などを基に客観的な基準を共有することで、双方が納得できる交渉を進められます。

専門家(弁護士・会計士)の活用

M&Aの交渉では、専門家の適切な支援が不可欠です。弁護士や会計士、M&Aアドバイザーといった専門家は契約書の作成やデューデリジェンス(企業価値の詳細調査)、価格算定のアドバイスなど、幅広い領域で役立ちます。例えば、企業価値算定の際にはDCF法や時価純資産法など複数の手法を実施しながら、その根拠をわかりやすく提示することで、交渉の場で有利に働く材料を提供してくれます。専門家の力を借りることで、より正確な価格評価を行い、誤解を減らすことができます。

適切なタイミングと市場分析の重要性

M&Aの交渉成功にはタイミングの見極めが大きく影響します。業界や市場の動向に加えて、自社の収益状況や相手企業の事業計画を把握することが重要です。例えば、業界全体が成長傾向にある時期は価格交渉において売り手が優位に立てる可能性があります。一方、市場が落ち込んでいる場合でも、買い手が事業の将来性を高く評価すれば有利な条件を引き出せることもあります。このように、市場環境を綿密に分析することが価格算定や交渉を進めるにあたって有効です。

価格交渉を有利に進めるための戦略

価格交渉を有利に進めるためには、戦略的なアプローチが必要です。その一つとして、企業価値をしっかりと説明できる資料や根拠を準備することが挙げられます。具体的には、過去の営業利益の実績や将来の収益計画、無形資産の価値について詳細な報告を行うと説得力が増します。また、競合他社と比較した市場価値の分析や、買い手側にとってのシナジー(相乗効果)を強調することも効果的です。これらを適宜組み合わせて交渉を進めることで、双方が納得のいくM&A価格を実現できる可能性が高まります。

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