大型買収から意外な事例まで!日本のM&A成功事例10選

1. 日本の大型M&A成功事例
武田薬品工業によるシャイアーの買収
武田薬品工業は2019年、アイルランドの製薬会社シャイアーを約6.8兆円で買収し、日本企業によるM&Aとしては過去最大規模の取引となりました。このM&Aは、武田薬品がグローバルでの存在感を高めるための戦略の一環として行われました。買収後、武田はシャイアーの有する希少疾患や血液関連の治療分野での強みを統合し、事業拡大を成功させました。この事例から、日本企業がグローバル市場で競争力を高めるための大型買収の可能性を示していると言えます。
アサヒグループの大規模買収と国際展開
アサヒグループホールディングスは、2016年から2020年にかけて約1兆円を投じ、欧州のビールブランドを次々と買収しました。その中には「ペローニ」や「グロールシュ」などの高級ビールブランドが含まれています。この一連のM&Aは、国内市場の需要減少への対応として、海外への積極的な展開を目的としたものでした。結果として、アサヒグループは欧州市場でのプレゼンスを飛躍的に高め、収益基盤の多角化を実現しています。アサヒの成功は、m&aを活用した国際展開の好例として挙げられます。
東芝の非上場化・TOBによる再建事例
2023年、東芝は日本産業パートナーズ(JIP)主導のTOBにより2兆円規模で非上場化されました。このM&Aは、東芝が抱える財務上のリスクや、経営の信頼回復を目的として行われたものです。再建プロセスの中で、株主からの圧力を抑え、長期的な視点で経営改善を図れる環境が整いました。この事例は、m&aが企業再建の有効な手段として活用される重要な成功例です。
ソフトバンクによるARM買収とその影響
2016年、ソフトバンクグループはイギリスの半導体設計会社ARMを約3.3兆円で買収しました。この買収は、IoT技術の普及を見据えた長期戦略の一環として行われました。ARMはスマートフォンやタブレット向けのチップ設計で世界市場をリードしており、ソフトバンクはこの事業を通じてテクノロジー分野での成長を目指しました。現在、ARMは再上場を進めており、ソフトバンクにとって重要な資産として機能し続けています。
日本製鉄による米鉄鋼大手買収(不成立エピソード含む)
2023年、日本製鉄は米国鉄鋼大手USスチールの買収を目指し、約2兆円を超える提案を行いましたが、不成立に終わりました。この不成立は、価格面以外にも取締役会の承認や米国政府の規制のハードルが影響したとされています。とはいえ、この試みは日本企業が積極的に海外市場を見据えたM&A戦略を模索している例として注目されました。この不成立エピソードから、m&aにおける事前調整や各国の規制対応の重要性を学ぶことができます。
2. 中堅企業・隠れた成功事例
味の素のトルコ食品企業買収と事業拡大
味の素は、2013年にトルコの食品企業であるKükre A.Ş.(キュクレ)を買収し、その後現地市場での事業拡大に成功しました。この買収により、同社は現地のヘルシーアイテムを主力商品とするブランドを取り込み、トルコ国内外での市場シェアを広げました。特に、健康志向が高まる中、キュクレの酢やドレッシング製品とのシナジー効果を活用して、事業基盤を強化しています。この事例は、味の素がグローバル戦略の一環としてM&Aを効果的に活用した成功例と言えるでしょう。
資生堂によるAI企業「Giaran」の取得
資生堂は2017年に米国のAIベンチャー企業「Giaran」を買収し、AI技術を活用したコスメティック分野の革新に成功しました。「Giaran」の優れたアルゴリズムを用いて、ユーザーにパーソナライズされた化粧品提案や、オンラインショッピングにおいて仮想メイク体験を提供しています。このM&Aはデジタルトランスフォーメーションの一環として進められ、競争力の強化や顧客満足度向上に寄与しました。この成功事例は、テクノロジー企業との連携がもたらすメリットを示しています。
セブン&アイ・ホールディングスの米国進出事例
セブン&アイ・ホールディングスは、海外展開の一環として米国のコンビニエンスストアチェーン「Speedway」を買収しました。この買収により、北米市場でのプレゼンスを大幅に拡大するとともに、店舗ネットワークの効率化を実現しました。特に、既存事業との統合を積極的に推進し、物流や商品開発の面でシナジー効果を生み出しています。M&Aを活用したこの成功事例は、競争が激しい海外市場でも持続的な成長を実現できた好例です。
京セラによるベンチャー企業買収と技術強化
京セラは、新しい技術分野への進出を目的として、特定分野に特化したベンチャー企業を積極的に買収しています。とくに、スマートファクトリーなどのデジタル技術を持つ企業を買収することで、自社技術を強化し競争力を高めています。この取り組みは、製造業のデジタル化が進む中で戦略的に重要な動きと評価されており、ベンチャー企業との技術協力によって独自技術をさらに発展させる成果を上げています。
凸版印刷によるデジタルDX分野でのM&A活用
凸版印刷は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するために、IT企業や技術スタートアップを積極的に買収しています。これにより、企業全体のデジタルサービス展開を強化し、スマートカード事業や電子化ソリューションの分野を拡大しました。特に、顧客ニーズに即したサービスの開発や、業務効率化を実現するために、買収企業のノウハウや技術をフル活用しています。このような事例は、従来型産業がDXを取り入れることで新たな価値を創造できることを証明しています。
3. 業界別M&Aの成功事例
製薬業界:アステラス製薬の米バイオ企業買収
アステラス製薬は、米国のバイオ医薬品企業であるIveric Bio社を2023年に約8040億円で買収しました。このM&Aにより、アステラス製薬は加齢黄斑変性症治療薬をはじめとする新たな治療領域に注力し、事業の多角化と収益基盤の強化に成功しました。同社の戦略的な選定プロセスとシナジー効果を重視した取り組みが、M&A成功の鍵となっています。
食品業界:キュクレ食品の成功したM&A事例
食品業界で注目されたM&A事例として、キュクレ食品が類似製品を展開する企業を買収した事例があります。この買収は主力商品の拡大や海外マーケットへの進出を目的として行われました。買収後、両社の統合により生産効率が向上し、新製品の開発スピードが大幅に加速。食品業界における成長戦略型M&Aの成功事例として広く知られています。
運輸業界:オリックスによる海運企業の買収
オリックスは、事業ポートフォリオ転換戦略の一環として複数の海運関連企業を買収しました。これにより、オリックスは運輸業分野での事業基盤を強化すると共に、バリューチェーン全体を見据えたサービス提供を実現。この買収が企業全体の収益向上に結びついたことは、運輸業界におけるM&Aの成功を示す重要な指標とされています。
通信業界:KDDIとALBERTの資本業務提携事例
KDDIは、AI解析技術を持つALBERTとの資本業務提携を通じて、新しい価値創出を目指しています。この提携により、KDDIは高度なデータ分析技術を活用して顧客体験の向上や新規ビジネスモデルの開発に成功しました。このケースは、通信業界において技術力の向上と市場競争力の強化を目指したM&Aの好例です。
印刷業界:凸版印刷のスマートカード買収
凸版印刷は、デジタル領域への事業拡大を目指し、スマートカード製造企業を買収しました。この買収によって同社は印刷業界の枠を超える新たな事業分野に進出し、特にDX(デジタルトランスフォーメーション)分野でのポートフォリオを強化しました。この動きは、伝統的な産業が技術進化を取り込み、変革を遂げる重要な成功事例として高く評価されています。
4. M&A成功の要因と学び
企業のシナジー効果を生む統合プロセス
M&Aが成功する大きな要因の一つは、買収した企業と買い手企業の間でシナジー効果を生む統合プロセスです。たとえば、有名企業が買収した際、単なる資産や市場規模の拡大に留まらず、持続的に利益を生み出す相乗効果を目指して統合戦略を立てることが求められます。このプロセスには、事業の補完性や相互理解のある社内文化を融合させる取り組みが重要です。ソフトバンクによるARMの買収はその典型例で、通信事業への拡大という長期的なビジョンを掲げて成功につなげています。
グローバル戦略としてのM&A活用
日本企業が海外市場での地位を確立する手段として、M&Aは非常に効果的です。特に、近年の大型買収事例では、日本企業が課題としていた技術力やブランド力の強化を目的とした戦略的買収が増加しています。武田薬品工業によるシャイアーの買収は、グローバル市場で競争力を高めるための一手であり、医療分野における国際的なプレゼンスを強化しました。このように、海外市場を視野に入れたM&A活用は日本の有名企業にとって欠かせない重要な施策となっています。
小規模でも大きな効果を生んだ事例に学ぶ
M&A成功の要因は必ずしも規模の大小に依存するわけではありません。小規模な買収であっても、その内容が的確であれば大きな結果をもたらすことがあります。たとえば、資生堂が取得したAI企業「Giaran」は、多様な顧客データを活用して商品の提案力を強化し、売上向上という目に見える効果を生みました。小規模買収の成功は、企業が的確なターゲットを選定し、自社のニーズに最適な企業との結びつきを図ることで実現可能です。
経営陣の決断力とスピード感
M&Aプロセスで重要なのは、経営陣の迅速かつ大胆な決断力です。市場環境が日々変化する中、好機を逃さないためにはスピード感が非常に重要です。たとえば、SHIFTが推進するロールアップ戦略は、経営陣が即断即決でM&Aを進めることで、市場のニーズに迅速に対応し高い成長率を実現しました。成功事例から学べるのは、計画的な準備ができている場合でも、柔軟な意思決定が企業の成否を左右するという教訓です。
M&A後の文化統合と人材育成
M&Aが失敗に終わる原因の一つとして、文化の統合が不十分であることが挙げられます。そのため、M&A後は従業員との継続的なコミュニケーションや相互理解を促進する取り組みが不可欠です。たとえば、アサヒグループは海外企業の買収後に、現地の文化を尊重しつつ自社の経営方針を浸透させる施策を実施しました。その結果、買収先企業の従業員満足度を向上させるとともに、競争力を強化しています。また、人材育成プログラムを併用し、長期的に見て双方に有益な成果を挙げています。
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