2024年に注目された国内M&Aを徹底解剖!日本企業の最新動向とは?

2024年に注目された国内M&Aランキング

2024年国内注目のM&AランキングTOP5

1位 日本生命保険 約1兆2,000億円

2024年に最も注目されたのは、日本生命保険が米系生保レゾリューションライフを約82億ドル(約1兆2000億円)で買収した取引です。円換算の買収額では、金融界のM&Aで過去最大の規模となりました。

2位 ルネサスエレクトロニクス 約8,900億円

次にランクインしたのは、ルネサスエレクトロニクスです。2024年2月、電子機器設計ソフトの米アルティウム(カリフォルニア州)を買収すると発表しました。両社はクラウド上で電子機器を設計できるソフトを開発する計画で、ソフト提供後は毎年4億8000万米ドル(約750億円)以上のキャッシュフローが生まれると見込んでいます。

3位 SHレジデンシャル・ホールディングス 約7,200億円

3位は、SHレジデンシャル・ホールディングスの取引です。積水ハウスの米国事業統括会社 Sekisui House US Holdings, LLCの子会社、SHレジデンシャル・ホールディングスは、アメリカで戸建住宅事業を展開する M.D.C. Holdings, Inc.を約49億ドル(約7,200億円)で買収すると発表しました。積水ハウスのM&Aでは過去最高額となりました。

4位 日本ペイントホールディングス 約6,300億円

日本ペイントホールディングスは、米国の化学企業AOCなどを傘下に持つ、持ち株会社を買収すると発表しました。米ファンドから全株式を約3,340億円で取得し、純有利子負債を合わせると買収額は約6,300億円となりました。

5位 平和 約5,120億円

パチンコ機器メーカーの平和は、ゴルフ場国内最大手のアコーディア・ゴルフを買収すると発表。アコーディアの持ち株会社であるPJC Investmentsの全株式を5,120億円で取得しました。平和は傘下に業界第2位のパシフィックゴルフマネージメントを持っており、両社を合わせたゴルフ場は321カ所と世界最大級になります。

これらの取引の特徴として、いずれも単に規模が大きいだけでなく、各企業が戦略的な意図を持って行ったものである点が挙げられます。取引額の大きさからも、各案件の影響力の高さがうかがえます。

業界ごとのM&A動向の特徴

テクノロジー業界では、ルネサスエレクトロニクスによる買収が代表例であり、技術革新が競争力の維持に重要であることがわかります。一方、保険業界では日本生命保険や明治安田生命保険の取引が相次ぎ、規模拡大を通じた市場支配力の強化が進みました。さらに、不動産関連ではSHレジデンシャル・ホールディングスが積極的な動きを見せたほか、製造業や医薬品業界では中規模から大型案件が増加しています。これらの動向は、各業界がそれぞれの課題に対応し、競争優位を確立しようとする戦略的な取り組みを反映しています。

国内M&A市場の背景とトレンド

企業の戦略的M&Aの目的とは?

国内M&Aランキングで注目される企業の多くは、事業拡大や競争力強化を目的としてM&Aを積極的に実施しています。日本企業がM&Aを通じて追求する一般的な戦略の一つは、既存市場でのシェア拡大や新市場への参入です。また、特定の技術やリソースを持つ企業を買収することで、自社の競争優位性を高めるケースも多く見られます。特に近年は、デジタル関連分野や持続可能な事業モデルに力を入れる企業が増え、それに伴い関連する対象企業への投資も増加している傾向があります。

少子高齢化とM&Aの関係性

少子化により、後継者問題を抱える中小企業が増加しており、その結果、事業承継型のM&Aが拡大しています。特に地方の中小企業では、事業を存続させるためにM&Aを選択肢とするケースが多く見られます。一方、高齢化による人材不足を補うため、大企業が新しい事業ドメインに進出する目的で中小企業を買収する動きも見られます。これにより、国内M&Aランキングの中でも地方企業との統合事例が注目されています。

スタートアップ支援とM&Aの活発化

スタートアップ企業に対する投資の拡大も、2024年の国内M&Aランキングに大きな影響を与える要素の一つです。日本政府や地方自治体がスタートアップ支援のための施策を推進しており、これがM&A市場を活性化しています。大企業にとっては、スタートアップの持つ先進的な技術やアイデアを取り込むことで、自社の成長エンジンとして活用する狙いがあります。例えば、テクノロジー関連分野やヘルスケア分野における買収が顕著で、国内のイノベーション促進を加速させる役割を果たしています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)が与える影響

近年ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が企業経営に与える影響が拡大しており、これが日本企業のM&A戦略にも直結しています。既存のビジネスモデルを刷新するためのテクノロジー導入や、デジタル化に特化した企業の技術・ノウハウを取り込むための動きが活発化しています。特に、IoTやAI分野での買収案件が目立ちます。このような動向は、日本企業の競争力向上にとって重要な要素となっており、国内だけでなく海外市場の進出戦略にも影響を与えています。

2024年注目の大型M&A案件

医薬品業界

医薬品業界では市場競争が激化している中、大手企業が戦略的パートナーシップを強化し、研究開発力をさらに向上させる動きが見られました。代表的な案件は、小野薬品工業による3,760億円の取引です。ナスダック上場の米バイオ薬品企業、デシフェラ・ファーマシューティカルズを24億ドル(約3700億円)で買収しました。

デシフェラはがんを対象とした医薬品の研究開発、販売に強みを持っています。今回のM&Aによって、小野薬品工業は新薬候補の確保と、米国における自社製品の販売体制の構築を目的としています。

金融セクター

金融セクターでは、日本生命保険の大型案件に加えて、明治安田生命保険の取引も注目されました。明治安田生命の米子会社であるスタンコープ社は、米保険会社のオールステート社から任意加入型団体保険を手掛ける子会社と関連会社を買収することで合意しました。買収金額は約20億ドル(約3,000億円)で、成長分野と位置付ける海外保険事業の強化につなげるねらいがあります。

IT分野

テクノロジー業界全体での買収活動が活発化している中、日本企業もデジタル領域の強化を目的としたM&Aを積極的に推進しています。代表的なのは、SCSKによる取引です。同社は通信システム構築のネットワンシステムズを完全子会社化する方針を決めました。買収金額は約3,600億円で、プロジェクトマネジャーなどの人材を確保するねらいがあります。

海外企業による日本市場進出の事例

2024年には海外企業による日本市場への進出も見逃せない動きの一つです。特に、グローバル市場で強い影響力を持つ企業が日本の技術力や市場規模に注目し、日本企業を買収するケースが増加しています。このような動きは、国内市場のさらなる国際化につながるだけでなく、企業間のグローバルな協業の機会も生み出しています。具体的な事例は報告段階では少ないものの、今後のランキングに影響を与える可能性が十分にあります。

今後の国内M&A市場の展望と課題

クロスボーダー案件の増加

近年、日本企業による海外企業の買収が増加しており、クロスボーダー案件の存在感が高まっています。レコフデータによると、2024年におけるM&A全体の件数4,700件のうち、IN-OUTが665件(前年度比+0.6%)、取引金額としては63,567百万米ドル(前年度比+16.9%)となりました。

テクノロジー分野をはじめとする成長領域への海外展開が加速する中で、日本企業は海外の有力企業との提携や買収を通じた競争力強化を目指しています。一方で、海外規制や文化の違いへの対応が課題として挙げられ、これらに対応するための専門的なスキルを持つ仲介業者の需要も高まりを見せています。

規制緩和や法制度の影響

国内M&A市場のさらなる発展には、規制緩和や適切な法制度の整備が大きな役割を果たします。特に、クロスボーダー案件の増加を背景に、海外企業による日本市場進出が今後も続くと予想されていますが、その際に透明性の高い法制度と手続きの簡略化が重要となります。また、中小企業のM&Aを促進するための法的サポートや、助成制度の拡充も求められています。これらの施策は、国内M&Aランキングの上位に中小企業の取引が一層増える環境を整えると言えるでしょう。

中小企業のM&A需要と仲介業界の役割

中小企業の事業承継問題が深刻化する中で、M&Aは有効な解決手段として注目されています。特に、少子高齢化の影響で後継者不足に悩む企業が増加している現在、M&Aによって企業価値を引き継ぎながら事業を存続させる動きが加速しています。また、中小企業に特化したM&A仲介業者の活躍により、スムーズな取引が可能となっています。これらの仲介企業は、適切な買い手を見つけるだけでなく、契約締結後の統合作業の支援も行っており、国内M&Aランキングの多くに中小企業関連取引が占められるような環境をつくり出しています。

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